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2021.01.15

新型コロナウイルス感染症の流行に思うこと|総合内科(千船病院)

新型コロナウイルス感染症の流行が続いています

ここがポイント

  • 新型コロナウイルス感染症の流行予測と日本の現状

    多くの民間医療機関では受け入れ体制の改革が必要に

  • 新型コロナウイルス感染症とは? 新しくわかったこと

    重症化しやすい人の傾向とは…

  • 今後の予測とワクチン?

    ワクチンの接種開始時期について

目次

1新型コロナウイルス感染症の流行予測と日本の現状

新型コロナウイルス感染症の流行予測と日本の現状

昨年1月から世界中に広がった新型コロナウイルスは、この1年であっという間に世界中に広がり、この1月末頃には感染者1億人、死者200万人以上の大災害になる模様です。しかも、恐ろしいことに、この1年で世界の感染者数は減少傾向がほとんど見られず、アメリカ、イギリスなどの欧米、南米、インドなど大半の国で第2波、第3波を繰り返し、新しい変異株も次々に出現し死者も増加の一途を辿っています。一体いつになったら収束するのか誰も予想できませんが、被害がまだまだ増加するのは間違いないようです。

 

日本では、第1波、第2波については他国に比べて感染者や死者数が圧倒的に少なく、ファクターXがあるとか、感染対策の優良国であると思われていましたが、第3波では今年の1月15日現在で第1波の12倍の患者数、死者数も第2波の5倍(第1波の3倍)となっています。大雑把に見ても今月末までで感染者30万人以上、死者4,500人位にはなりそうな状況です。(一方、日本より中国に近い台湾は人口2,400万人と日本の1/5程度ですが、新型コロナウイルスの感染者はこの1年で850名、死者7名という信じられない数字が報告されています…。)

日本の60~80代の高齢者の死亡率は、4-6月の第1波に比べて半分以下になっていますが、どうにも感染者の増加が大きすぎるのが大問題になっています。重症患者も860名以上で、このままでは医療の受け皿がパンク状態(いわゆる、「医療崩壊」)となる日が目前です。いつ急変するかもしれない、ハイリスクの高齢者でも必ず入院できるとは言えない状態になってきています。また、日本の病院で新型コロナウイルス感染症の患者を診療し治療した実績がある医療機関は全医療機関の18%程度しかないという事実もあります(厚生労働省 病院報告 令和2年10月現在)。日本の全病院の8割近くを占める200-300床以下の民間医療機関が多くは重症の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れるには、ハード面でもソフト面でも大きな改革が必要になります。とても短期間にはできないことばかりで、院内感染も怖くて大半の医療機関が二の足を踏んでいる状況です。

 

当院は、最初から先駆的に新型コロナウイルスの診療にあたり、試行錯誤しながらも妊婦さんや子供を守りながら、新型コロナウイルス感染症の患者さんと他の患者さんの動線が交わらないように努め、これまで一度も院内感染やクラスターは生じておりません。私も立場上、いくつかの医療機関の情報を得ることができますが、公的機関でさえ当初は受け入れを躊躇い、受け入れを開始しても診療がスムーズにいかず、クラスターを生じたケースも多く見聞きしてきました。

2新型コロナウイルス感染症とは? 新しくわかったこと

新型コロナウイルス感染症とは? 新しくわかったこと

当初は、全くどのようなウイルスなのか、感染経路も、伝播の仕方も、病状も、後遺症も、治療法も全く不明の状態でした。しかし、この1年でかなりのことが分かってきました。罹患するのは、人との交流が多い50歳以下が多いのですが、大半は重症化せず若年者では無症状の人が30~50%近くいると言われています。

一方、60歳以上の人は感染すると重症化しやすく、特に最近のデータでも新型コロナウイルスに罹患した人で60代の死亡率は3%、70代で5%、80代以上では10%以上となっています。特に、糖尿病や高度肥満、慢性腎疾患、慢性心疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの基礎疾患がある人は重症化しやすいことも分かっています。小児の死亡が殆どないのは大きな救いですが、いろんな病気を抱えた高齢者が重症化しても、小児ほどに社会に大きな声を上げにくい、社会的な圧力となりにくい、というのは残念ながら事実です。

 

また、同じ日本でも、東京と大阪では、かなり事情が異なります。東京の人口は1,400万人で、1月15日現在の罹患者は8万人程度、死者700人弱(致死率1.2%)、重症144名(人工呼吸器95台)ですが、大阪府は人口870万で感染者は3.5万人ですが、死者700名弱(致死率2.3%)、重症171名(人工呼吸器125台)と、大阪の死者数、重症者数が異常に多いのが特徴です。大阪は東京よりも高齢者比率が高く、若い世代との同居も多いのが原因の一つと言われています。それだけ医療への負担も大きくなります。従って、大阪の人(特に若者)は、高齢者に感染させないためにもより一層の配慮(自覚)が必要になりそうです。(ちなみに日本では季節性インフルエンザに毎年1,000万人以上が罹患しますが、死亡者は3,000~7,000人程度で、新型コロナウイルスはその30~40倍の致死率となります。)

 

 

さらに、新型コロナウイルスの後遺症については、若年者も油断できません。前回述べましたように、新型コロナウイルス感染後60日が経っても、味覚異常19%、呼吸苦18%、だるさ16%、脱毛20%などの後遺症と呼べる症状が見られています。また、最近ではうつ病やPTSDなどの精神疾患、認知機能の低下も10%程度あると言われています。120日経っても、この半数の方が後遺症で苦しむというデータがあり、これではとても仕事どころではありません。

今年になって中国の研究チームが、英医学誌のランセットに投稿した論文では、中国武漢で新型コロナウイルスに感染した患者の76%が発症から半年以上たっても後遺症に苦しんでいるという報告がありました。具体的には、軽い運動後の疲労感や筋力低下が残る人が63%、睡眠障害が26%、不安やうつ病(特に女性に多い)も23%、脱毛22%という報告でした。

その他にも、肺に起こった線維化は間質性肺炎の形でほぼ生涯に渡って残り、日常生活に大きな支障を生じうるというのです。これほど、長期間、高頻度に後遺症の残るウイルスは他にほとんどないと日本の専門家も述べています。残念ながら、これら後遺症の治療法はまだほとんど分かっていません。

 

*千船病院では、新型コロナウイルスに関連する後遺症に対する専門外来は行っておりません。

3今後の予測とワクチン?

今後の予測とワクチン?

政府は、この1月に第2回目の緊急事態宣言を全国的に発出しましたが、昨年4月ほどのインパクトもなく、前回ほど多くの人の行動制限には至らないだろうと言われています。ただ、1年前に比べて、治療法も進歩し、何よりもワクチンが今年から多くの先進国で実施されるようになりました。日本でも今年2月末以降から順次接種開始されるそうですが、ワクチンが医療従事者や高齢者などのハイリスクの人の大半に普及するのは、今年10月頃と言われています。

まだまだ日本での患者は急速に増加しており、当分は油断できない状況が続きます。

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