逆流性食道炎の治療について
逆流性食道炎(胃食道逆流症)は、食生活の欧米化、肥満、高齢化の影響で日本でも患者数が増加しています。食生活をあらため肥満を改善することで症状がよくなることがありますが、多くの場合、胃薬などの内科的治療が必要となります。内科治療で十分に症状が改善しない場合に、外科治療を考慮します。
胃食道逆流症では、胸焼けや胸痛などの典型的な症状以外に、長引く咳や声のかすれなど、呼吸器や耳鼻科的な症状を示すことがあり、長年原因不明とされているか胃薬を継続的に内服されている場合が多いです。特に粘膜にあまり異常のない胃食道逆流症は、診断機器が普及しておらず検査に手間もかかるため、病態を正確に診断するのは困難ですが、当院では胃透視や内視鏡だけでなく24pHインピーダンスモニタリング、食道内圧検査(中津済生会病院と連携)、胃シンチグラフィーを駆使して、患者さんの胃・食道機能を客観的に評価することでテイラーメードの手術を行っています。
特に声のかすれや喉の違和感、喘息など上部食道への逆流を評価するためには、下咽頭インピーダンスモニタリングという特殊なカテーテルを必要としますが、現在日本でこの検査を行える施設は4施設のみで、解析にも熟練を要します。また、強皮症という膠原病をおもちの方の場合には食道だけでなく胃の排出機能が低下するため、術前に胃排出能の検査を行います。これも現在日本で行っている施設はわずかのみと考えられます。
治療方法
生活習慣の改善
- 食べ過ぎをひかえ、ゆっくり時間をかけて食べる
- 食後2−3時間程度は横にならない
- 枕を高くして寝る
- 禁煙
以下のような食べ物を避ける
- あぶらもの、チョコレートや柑橘類
- カフェイン、アルコール
薬物による治療
胃酸をおさえる薬での治療が中心となります。内服を中断すると症状が再発することが多く、長期の内服継続が必要となることが多くあります。消化管運動機能改善薬や漢方薬を処方することがあります。
手術による治療
全国逆流性食道炎手術症例数(日本内視鏡外科学会アンケート調査報告 2017)
内服で症状がなおらない場合、改善はするが中止するとすぐに再燃する場合、アレルギーや長期内服での副作用が気になる場合には手術を考慮することになります。症状の原因が本当に逆流からきているかどうかを確かめるために最新機器を用いて精密検査を行います。手術は体にやさしい腹腔鏡手術で行い、2時間程度の手術となります。5〜10mm程度の小さな切開をおき、細いカメラや手術器具を用いて行います。噴門形成術は開腹の時代を含めると60年以上も昔から行われており、日本でも年々手術件数が増加しています。術者の北浜医師は、1991年に米国で初の腹腔鏡下Nissen手術を行ったDr.Lee Swanstrom先生の下で手術トレーニングを行いました。
- 1外来(初診)
- 複数の問診票を使用して、現在の症状について詳細な問診を行います。これまでの内視鏡検査結果やかかりつけの医師からの紹介状をご持参ください
- 2検査
- 胃カメラ、食道造影検査、24時間pHインピーダンスモニタリング、食道内圧検査、場合により胃シンチグラフィーを数回に分けて行います。
- 3全身状態の評価
- 手術適応と判断された場合には全身麻酔が安全に実施可能かを評価するための検査(血液、尿検査、心電図、呼吸機能検査、胸部レントゲン、胸腹部CT検査など)を行います。va
- 4手術
- 出典 メイヨークリニック
手術費用(概算)
入院予定期間 | 3〜4日間(手術前日入院となります) |
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3割負担概算金額 | 16万円程度 |
※保険の負担割合は患者さまによって異なります ※保険診療のため、高額療養費制度の対象となります。