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診療部 ー 脳神経外科

治療について

外科的手術

脳血管障害

くも膜下出血・未破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術

未破裂脳動脈瘤に関しては、ガイドラインに基づき、最大径5mm以上の脳動脈瘤や、5mm未満でも前交通動脈および後交通動脈といった破裂リスクの高い部位や、ブレブ(コブの上のたんこぶ)を認める症例に対して、治療をお勧めしています。
術前には3D CTAを用いて手術シミュレーションを行い、術中には運動誘発電位(MEP)モニタリングや術中蛍光造影(ICG)を用いて、穿通枝や皮質枝の血流障害を防ぎ、より安全性の高い治療を心がけています。また破裂脳動脈瘤に対しては、術中にくも膜下出血をウロキナーゼ含有生食で洗浄し、脳槽洗浄を行うことで、遅発性脳血管攣縮を予防しています。

未破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術

71歳女性。頭部打撲精査のCTにて発見。術後合併症なく経過。

  • A

    術前CTA

    最大径5mm、ブレブを伴う右中大脳動脈瘤(矢印)

  • B

    術前3D CTAシミュレーション(矢印:動脈瘤)

  • C

    動脈瘤(矢印:ブレブ)

  • D

    3本のクリップを用いて母血管の形状を保つようにクリッピング

  • E

    ICGで母血管、穿通枝の血流を確認、動脈瘤の血流は消失

  • F

    術後CTA

    動脈瘤は消失(矢印、緑はクリップ)し中大脳動脈の正常血流は温存されている。

破裂脳動脈瘤に対する開頭クリッピング術

75歳女性。意識障害で発症(WFNS grade 2)。開頭クリッピング術後、水頭症に対するシャント手術を行い、リハビリによりADL自立し自宅退院。

  • A

    術前CT

    脳底槽を中心とした厚いくも膜下出血

  • B

    術前CTA(正面)

    右中大脳動脈瘤4mm(矢頭)

  • C

    術前CTA(側面)

    右内頸動脈-後交通動脈分岐部に最大径5mm、
    先端にブレブを伴う動脈瘤(矢印)

  • D

    硬膜の下に先端が潜り込んだ内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(赤点線)

  • E

    動脈瘤ネックより起始する後交通動脈を温存してネッククリッピング

  • F

    ICGで母血管、後交通動脈の血流を確認、動脈瘤の血流は消失

  • G

    術後CTA

    動脈瘤は消失(矢印、矢頭、水色はクリップ)

脳梗塞・もやもや病に対する血行再建術(バイパス術)

脳梗塞予防におけるバイパス術の有用性を証明した日本の大規模臨床試験(JET-study)では、厳密な手術適応基準(安静時脳血流量が正常の80%未満かつアセタゾラミド負荷で脳循環予備能が10%未満)が定められています。当院ではSPECT(脳血流シンチ)が施行可能で、上記の適応基準を満たす症例に対してバイパス術を行なっています。
虚血もしくは出血発症のもやもや病に対しては、バイパス手術の有用性が確立しています。無症候性のもやもや病に対しては、脳血管撮影やSPECTなどの結果から手術適応を総合的に判断しています。手術は、直接バイパス術と間接バイパス術(硬膜や筋膜を脳の表面に敷く)を併用して行います。

脳主幹動脈狭窄に対するバイパス術

72歳女性。7年前に左脳梗塞を発症、リハビリにて症状改善し退院。経過中、左中大脳動脈狭窄の進行を認めた。術後合併症なく経過。

  • A

    MRI-FLAIR

    左前頭葉に陳旧性脳梗塞

  • B

    SPECT

    左中大脳動脈領域の安静時脳血流低下(前頭葉78%)

  • C

    CTA

    左前頭葉に陳旧性脳梗塞

  • D

    バイパス前

    前頭葉と側頭葉の脳表動脈(矢印)

  • E

    バイパス後

    各々、頭皮動脈(浅側頭動脈)の頭頂枝と前頭枝をバイパス

  • F

    ICGでバイパス血管の血流を確認(矢印)

頸部頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜剥離術(CEA)

症候性(TIAまたは軽症脳梗塞)で50%以上の狭窄、無症候性で80%以上の狭窄病変に対して外科治療を行っています。術前にはMRIや頸動脈エコーを用いたプラーク性状診断や、術後の過灌流を予測するためのSPECTなどを行い、CEAもしくはステント留置術(CAS)の適応を判断しています。手術は全例、内シャントを用い、遮断中の脳血流を維持しています。

頸部頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜剥離術

73歳男性。1年前に右ラクナ梗塞を発症、精査にて発見。経過中、左頸動脈狭窄の進行を認めた。術後合併症なく経過。

  • A

    術前MRA、アンギオ

    左頸部内頸動脈に80%の狭窄。術後MRA:狭窄は解除されている。

  • B

    頸動脈分岐部を露出

  • C

    内シャントを総頸動脈から内頸動脈へ挿入した後に、内膜を摘出

  • D

    血管縫合後

脳腫瘍

頭蓋内腫瘍摘出術

髄膜腫、神経膠腫、聴神経鞘腫、転移性脳腫瘍、海綿状血管腫など、頭蓋内にできた腫瘍を摘出する手術です。腫瘍によっては放射線治療、化学療法などの術後補助療法が必要となるため、術後に放射線治療が可能な施設へ紹介する場合もあります。

頭蓋底腫瘍摘出術

30歳女性。進行する視力障害(両側光覚弁)、嗅覚障害にて発症。前頭蓋底に7cm大の髄膜腫。両側前頭開頭、半球間裂アプローチで全摘出。術後視力は文字も読めるまでに回復。

脊椎脊髄疾患

脊椎脊髄疾患

脊椎変性疾患の手術は、除圧術と呼ばれる脊髄や神経根への圧迫を骨や靱帯を削ることによりとってしまう手術と、ケージと呼ばれる人工骨やスクリューなどを用いてズレや不安定な動きを止めてしまう固定術があります。
器具の目立つ手術ですが、神経の除圧を顕微鏡にて安全かつ確実に行うことが最も重要で、固定は透視装置を用いて確実な手術を行うよう心がけています。

頸髄損傷に対する椎弓形成術

77歳男性。転倒後、両上肢筋力低下。C3/4、C6/7レベルに頸髄損傷(左矢印)。兵庫医科大学病院へ転院搬送、緊急手術(C3椎弓切除、C4-6椎弓形成)。リハビリを行い、左握力低下は後遺したが杖歩行可能、ADL自立。

その他の外科的手術

  • 急性硬膜下出血、急性硬膜外出血に対する開頭血腫除去術
  • 慢性硬膜下血腫に対する穿頭血腫ドレナージ術
  • 片側顔面痙攣、三叉神経痛に対する微小血管減圧術
  • 正常圧水頭症に対するシャント手術

脳血管内手術(脳血管障害)

脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

未破裂脳動脈瘤の場合は、術前に2週間の抗血小板療法(DAPT)を行い、血栓性合併症を予防しています。問題なければ術後3日目に退院となります。

脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

80歳女性。意識障害で発症(WFNS grade 4)。くも膜下出血を認め、右内頸動脈-後交通動脈分岐部に3mm大の動脈瘤を認め、コイル塞栓術施行。2本のコイルで動脈瘤内の血流は完全に消失。水頭症に対するシャント手術を行い、意識清明で食事可能となり、リハビリ転院。

頸部頸動脈狭窄症に対するステント留置術

術前に抗血小板療法(DAPT)を行った上で、局所麻酔で施行します。術中の遠位塞栓を予防するためのプロテクションデバイス(MOMA Ultraなど)を用います。

頸部頸動脈狭窄症に対するステント留置術(CAS)

72歳男性。2年前に右脳梗塞を発症、精査にて発見。経過中、左頸動脈狭窄の進行を認めた。術後合併症なく経過。