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診療部 ― 外科

治療について

胃がんの治療について

病因がヘリコバクターピロリ感染であることがほぼ分かってきたため、より内視鏡検査での早期診断や除菌が治療成績の向上にとって重要となってきました。40歳以上の方はヘリコバクターピロリの感染も多く、ドックでの検診をおすすめします。

治療について

粘膜内に留まる早期胃がんでは内視鏡による粘膜切除治療を消化器内科で行っています。
外科的な手術が必要になれば早期のがんであれば腹腔鏡手術、進行がんの場合は根治性を慎重に考えた上で開腹手術か、腹腔鏡手術かを選択しています。手術では胃の2/3を切除することが多いですが、がんの拡がりや部位によっては胃を全部取り除く場合があります。
当科では診断から手術まで出来る限りお待たせしない日程での手術を心がけており診断から手術までの期間は2~3週間程度です。手術は原則、前日入院、術後は約7~10日程度での退院となります。
術後は管理栄養士による栄養指導や、化学療法室での抗がん剤治療等を含めチーム全体でひとりひとりの方の生活に合わせたきめ細かな治療をモットーとしております。

大腸がんの治療について

症状がなく検診の便潜血検査が陽性で大腸カメラをして見つかることも多い病気です。目に見える血便、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、お腹が張って便の残った感じ、貧血などで見つかることもあります。

術前検査

大腸内視鏡、注腸造影、腹部超音波、CTスキャンなど

治療方法

早期のがんは内科で内視鏡による粘膜切除治療を行っています。2018年現在70%の大腸がん症例が腹腔鏡手術で行われています。

入院まで、および術後の経過

外科初診から手術まで1-2週間程度 手術前日-2日前入院、術後2-3日目から食事開始、7-10日前後の入院期間。 直腸がんでは便の回数が増える場合がありますが、それ以外には食事内容など術前と変わるところはありません。がんの進行度合いによっては、術後抗がん剤治療をお勧めする場合もあります。

乳がんの治療について

乳がんは最近増加の一途を辿っており、日本人女性の12人に1人が乳がんにかかる時代になっています。
乳がんは自己検診でも見つかることがあるため、定期的な自己検診が重要になりますが、触知できない段階で早期がんを見つけるべく、最新鋭のマンモグラフィーであるトモシンセシスシステムを導入し、診断にあたっています。

治療について

乳がんは化学療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的治療薬等)が比較的よく効くがんであり、奏功する場合にはStage IVの乳がんでも長期生存が可能です。
このため、手術治療と化学療法、放射線治療を組み合わせた加療を行っていきます。
乳がんはどういうお薬が効くがんかによって4タイプに分類されますが、これを調べた上でさらに乳がんの大きさや広がり、リンパ節への転移等を考慮、患者さまにとって最良の手術、化学療法等を含めた治療プランを提案します。

胆石の治療について

消化液の一種である胆汁は肝臓で生産され、胆嚢という袋状の臓器に貯められます。胆嚢は食事をすると収縮し、総胆管という胆汁が流れる管を通して胆汁を十二指腸に流し込み消化を助けます。脂っこいものを食べた後に右上腹部が痛くなったり、みぞおちが重くなることがある方は胆石による症状の可能性が考えられます。石により胆汁の流れが妨げられるためと考えられており、食事をやめれば落ち着くことが多い様です。痛みには個人差があり、鈍い痛みから差し込むような痛み、背中、肩に痛みが出現する場合もあります。胆石がなくならない限り、症状が繰り返されるため治療が必要です。症状のない方は治療適応ではありません。
胆嚢にばい菌が入って起こる胆嚢炎は胆石が原因のことが多く、全身に菌が入り込んでしまう菌血症をおこすこともあり、最近では緊急手術の対象とされています。

治療について

腹腔鏡で行う手術としては最も古くから行われており確立された治療方法となっています。手術では石だけではなく胆嚢を取り除きます。胆嚢を残して胆石だけ取り除くとまた胆嚢に胆石ができることがあるからです。総胆管にも胆石がある場合は消化器内科と連携して内視鏡で十二指腸側から胆石を取り除いてもらいます。

鼠径ヘルニア(脱腸)

鼠径部には鼠径管という管があり、男性では精管や血管が、女性では子宮を支える靭帯が通っています。その鼠径管の入り口や途中から筋肉や筋膜が弱くなったことが原因で、腸管が脱出するのが鼠径ヘルニアです。放置すれば徐々に大きくなったり脱出した腸管が戻らなくなったりすることがあり、その状態を嵌頓(かんとん)と言います。嵌頓すると場合により腸が壊死してしまうこともあり、緊急手術が必要となることがあります。現在の症状を取るため、また、将来にヘルニア嵌頓を起こさないために手術を受けることが望ましいと考えます。

症状

鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感、あるいは痛みを伴います。 また、立っているとき、膨らみや違和感があるのに、横になると内容物がお腹のなかに戻るので膨らみや違和感がなくなります。

原因

胎児期(お母さんのおなかの中にいるとき)に男性であれば睾丸、女性であれば子宮を支える靭帯が鼠径管(筋肉が重なり合ってできた筒状のすき間)を通り陰嚢や恥骨方向に落ち込む際に形成される腹膜鞘状突起(鼠径管内に嚢状に脱出したもの)の開存、コラーゲン代謝異常、骨盤の解剖の相違、遺伝的素因、加齢などが原因として現時点では考えられています。

診断・検査

基本的には問診と視診、触診を行います。
診察だけでは鼠径ヘルニアかどうかわかりにくい場合には、超音波(エコー)検査やCT検査などの画像検査を行い、より詳細に状態を確認してから診断を確定します。

治療方法

鼠径ヘルニアは薬で治療できず完全に治すためには手術が必要です。腹壁の弱くなったところを メッシュ(人工膜)を当てて補強する方法と、縫い縮めて補強する方法がありますが、メッシュを使用する方が再発の減少につながります。メッシュを用いる方法は現在最も行われている方法で、当科でもこの方法で行っています。メッシュを用いて修復する方法は、①鼠径部切開法、②腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術、③ロボット支援下鼠径ヘルニア修復術の3種類があります。

■手術方法

当科では、術後の社会復帰までの時間が短い腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を第一選択としています。腹腔鏡下手術の際には、二酸化炭素で膨らませて空間を作って手術を行います。前立腺手術の既往がある方や、心肺機能の面で全身麻酔に耐えられない持病のある方には鼠径部切開法を行っています。また腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術で開始しても、癒着等で困難な場合には術中に鼠径部切開法に変更いたします。ロボット支援下鼠径ヘルニア修復術は、近年導入した方法で、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術と同じ3カ所の小さなポートから手術を行います。手術の際にロボットを使用することで更に精緻な操作が可能となります。術後の合併症や再発の減少が期待されています。ロボット支援下鼠径ヘルニア修復術は、現時点では保険診療に位置づけられていない新規の医療技術に該当し自費診療で行っております。

■入院まで、および術後の経過

初診から手術までに計2回の外来受診が必要です。手術前日または手術当日の入院で、問題がなければ翌日退院です。
2−4週間後に外来受診 ※病状により異なることもあります。
術後の運動制限はありません。

術後のケアについて分かりやすくまとめましたので、こちらのPDFをご確認ください。

鼠径ヘルニア外来術後の
生活について

腹壁瘢痕ヘルニア

手術の傷がうまく治癒せずに、お腹に力を入れると傷のところを中心に盛り上がって痛みや違和感を生じるものを腹壁瘢痕ヘルニアと言います。手術で切った皮膚は治って見えても、その内側の筋膜という丈夫な組織がくっついていないので、腹圧をかけると腸などの内臓が皮膚のすぐ下まで出てきます。 開腹手術後の10%ぐらいの方に発生すると言われていますが腹腔鏡手術後にも認めます。治すには手術が必要で、日本では1万件ほどの手術が毎年行われています。
腹壁瘢痕ヘルニアの修復には、メッシュを使用した手術が必要となることが多いです。手術後にはメッシュ感染や慢性疼痛、そして再発などが問題となります。手術レベルは外科医の技量に大きく影響され、専門知識や技術が求められるため、対応できる医療機関が限られています。
経過観察すると徐々にヘルニアが大きくなって症状が強くなることや、嵌頓(かんとん)という腸が脱出したまま戻らず緊急手術が必要になることもあります。

症状

主にお腹の手術後、お腹に力を入れたりすると傷のある部位を中心にところどころあるいは全体が盛り上がってきて、痛みや違和感が生じます。術後すぐ症状が出ることもあれば数年後に出てくることもあります。また、大きなものでは咳や排便、排尿の際にお腹に力をかけにくく、腰痛を伴います。

原因

手術の際に正しく閉鎖してもうまく治癒せずに、瘢痕ヘルニアになることがあります。その原因は様々言われていますが、年齢、糖尿病、肥満などのほか、手術後の傷が感染したり、栄養状態が悪かったりと多様です。明らかな原因がなくても発生することがあります。

診断・検査

基本的には問診と視診、触診を行います。 診察だけでは腹壁瘢痕ヘルニアの正確な部位やお腹の中の状態を判断できないため、超音波(エコー)検査やCT検査などの画像検査を行い、より詳細に状態を観察してから、診断を確定します。

治療方法

非常に小さいヘルニアに対しては腹壁切開法で行いますが、術後の感染率を減らすために基本的には内視鏡手術を採用しています。小さなヘルニアやメッシュ留置の希望がない場合を除いて、再発予防のためにメッシュを使用しています。
手術方法は、受診時に患者さまと相談しながら決めていきます。

■手術方法

内視鏡での手術方法は、eTEP法(お腹の壁の中にメッシュを入れる方法)を取り入れています。術後疼痛は軽く、長期的なメッシュによる合併症が少ないことが特徴です。開腹での手術を行うこともあります。年齢や性別、基礎疾患の有無やその種類、既往手術の内容など、患者さまの手術後のQOL(生活の質)の向上を第一に考えて手術方法を選択します。

下図:TAR(腹横筋リリース)という方法を使えば、大きなヘルニアを閉鎖するために、腹横筋を切開して大きなメッシュを留置できます。内視鏡手術であるeTEPを用いることで、術後の傷の感染や疼痛をさらに減らすことが可能です。

■入院まで、および術後の経過

初診から手術までに計2回の外来受診が必要です。手術前日の入院で、入院期間はヘルニアの部位やサイズにより異なり、問題なければ3−7日後の退院です。 2−4週間後に外来受診。※病状により異なることもあります。 その後も半年から1年に1回の診察を継続します。

術後のケアについて分かりやすくまとめましたので、こちらのPDFをご確認ください。

腹壁瘢痕ヘルニア外来術後の
生活について

肛門疾患の治療について

出血や肛門にコブができる痔核(いぼ痔)、痛みや出血をともなう裂肛(切れ痔)、 肛門周囲の痛みや排膿を伴う肛門周囲膿瘍、痔瘻(あな痔)、粘膜が飛び出してくる直腸脱などがあります。

治療について

痔核や裂肛は多くの場合、生活習慣の改善、排便のコントロールと外用薬でよくなります。
病悩期間が長くなり症状が進んでいくと手術治療が必要となりますので、早い時期での受診をおすすめします。
手術が必要となった場合に当院では最短1泊での手術を行っています。肛門周囲が腫れて痛くなったり、膿が出たりした場合は肛門周囲膿瘍の可能性が高いです。
肛門の中と交通ができると痔瘻と言われ手術が必要となります。こちらも時間が経つほど治療が難しくなるため、早期の受診をおすすめします。
直腸脱は加齢により骨盤底の筋肉が弱くなることにより直腸が脱出する状態になった病気です。
骨盤底の筋肉の状態を元に戻すのは困難であるため、脱出した粘膜を切除する方法や肛門の筋肉を締め上げる方法、おなかの中から直腸を吊り上げる方法(腹腔鏡での手術も可能です)などがあり、 患者さまに合わせた治療方法を提案させていただきます。

下肢静脈瘤の治療について

下肢の表在静脈の逆流防止弁が破綻することによって、下肢に静脈血が逆流して足のうっ血をきたす病気です。こむら返りを頻回に起こしたり、夕方足が重だるくなったりする症状が出現します。進行すると皮膚の炎症を起こし皮膚の色がこげ茶色になり、潰瘍形成をします。見た目は静脈が腫れてコブのような状態になることが多いのですが、コブが目立たず、むくんだ状態のような場合もあります。

検査

超音波検査は必須です。静脈血の逆流があるかどうか必ずチェックします。必ずしも必要な検査ではありませんが、当院では下肢CTを行い下肢静脈瘤の形状を確認します。

治療について

当院では初診時に診察室で超音波を行い、治療方法をその場で判断することが可能です。
弾性ストッキングによる圧迫療法や手術療法などが主たる治療法です。弾性ストッキングは治療に適した圧迫力のものを選び、着用指導も行います。手術は、2018年から低侵襲の高周波での血管内焼灼治療を導入しており、日帰りあるいは1泊入院での加療が可能です。また重症例には静脈瘤の抜去手術も行っており、こちらも患者さまに最も合った治療を提供しております。お気軽に受診いただければ幸いです。

下肢閉塞性動脈硬化症の治療について

動脈の内腔が徐々に狭くなり、足先へ血液が十分に流れなくなる病気です。喫煙者・糖尿病の方に多い病気です。初期は、歩くと足が痛くなり休むと足の痛みがなくなる(間欠性跛行)といった症状を呈します。病気が進行すると、安静時痛や足の一部分が潰瘍化もしくは黒色化したりします。

検査

手足の血圧や脈波を測定し、足にどれぐらいの血流が流れているのか調べます。また、下肢造影CTや血管造影で病変の有無や形態を調べます。

治療について

軽度な場合には、抗血小板薬の内服や運動療法を指導します。症状がひどい場合にはバイパス手術もしくはカテーテルによる治療を行います。

呼吸器疾患の治療について

当院では呼吸器疾患(気胸、肺がん、転移性肺がん等)に対してはほぼ100%胸腔鏡下で手術を行っています。

治療について

肺がんに対しては傷が小さく社会復帰が早い完全鏡視下での手術治療を神戸大学呼吸器外科教室と連携して行っております。 また気胸に対しては24時間対応できる体制をとっており、できるだけ迅速に手術を行うことによって早期に社会復帰できるよう心掛けております。

がんに対する化学療法、緩和療法について

当院ではがんに対する化学療法(抗がん剤などの治療)にも積極的に取り組んでいます。最近ではほとんどの化学療法を通院で9階の化学療法室で行っており、就業しながらの加療も可能です。また、がんの痛みや精神的な苦痛、薬の副作用に対する対策などは、専門看護師を中心として薬剤師や栄養管理士などのチームで対応にあたっております。在宅医療についてもこのチームを中心として地域の先生方と連携しながら急変時には24時間対応できる体制をとっています。また抗がん剤注入や、栄養管理を目的した埋め込み型の中心静脈ポートの作成や、コントロールな困難な胸水や腹水に対する濾過濃縮再静注法にも対応しています。