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診療部 ― 消化器内科

肝臓疾患

肝臓疾患

肝臓疾患には、ウィルス性肝炎や自己免疫性肝炎などの良性疾患、原発性肝がんなどの悪性疾患があります。C型肝炎に対してはインターフェロンフリー治療、B型肝炎に対してはインターフェロン治療・核酸アナログ治療を行い、治療後の肝がんスクリーニングもマネジメントしています。また最近注目されているNASH/NAFLD(非アルコール性脂肪性肝炎/非アルコール性脂肪性肝疾患)に対しても、薬物療法だけでなく食生活の改善や運動療法の指導を行い、肝障害の進行を改善させるように取り組んでいます。肝がんに対しては、造影エコー・MRI・CT検査による診断と、カテーテル治療(TACE・HAIC)やラジオ波焼灼療法(RFA)などの従来治療に加え新規分子標的薬による化学療法を行っています。

慢性肝炎

B型肝炎・C型肝炎という肝炎ウィルスによるものや、アルコール性肝障害が知られていますが、最近では非アルコール性脂肪肝といった疾患も増えてきています。慢性肝炎を放置していると、肝硬変・肝不全といった肝臓が正常に機能しない状態になったり、肝臓がんを発症したりすることがあります。いずれの肝疾患も初期段階では自覚症状に乏しく、健診などの血液検査で肝障害を指摘されて受診されることがほとんどです。

■症状

ほとんど自覚症状がないことが多く、全身倦怠感や腹部膨満を認めることがありますが、そのような段階ではかなり病状が進行している場合もあります。

■治療

ウィルス性肝炎に関しては、B型肝炎に対する核酸アナログ製剤や、C型肝炎に対する直接作用型抗ウィルス剤(DAAs:Direct Acting Antivirals)を用いたインターフェロンフリー治療を行っています。特にC型肝炎に対するインターフェロンフリー治療では、100%に近い治癒が可能です。C型肝炎が治癒したのちも、肝臓がんの発生リスクは少なからずあるため、定期的な画像検査を行う必要があります。

肝硬変

肝炎ウィルスやアルコールによる肝障害が慢性的に持続すると、炎症により肝臓が硬くなってしまう肝硬変という状態になります。肝硬変になると徐々に肝臓の機能が低下し、正常の肝臓の働きができなくなってきます。肝硬変が進行すると、お腹に水がたまる腹水貯留や、目や皮膚が黄色くなる黄疸、意識障害や昏睡に陥る肝性脳症を来します。腹水貯留・黄疸・肝性脳症を伴ってくると日常生活が制限されることも多くなります。このような肝硬変になる前に、肝障害の原因を精査し、肝硬変にならないよう肝障害の原因の治療を行っていくことが重要です。治療としては、利尿剤の投与が中心となり、患者さん自身の腹水からアルブミンだけを濃縮して自身に点滴して戻す腹水濾過濃縮再静注法(CART)も行っています

原発性肝がん

肝臓は”沈黙の臓器”と呼ばれ、肝臓がんの初期では自覚症状がほとんどありません。検診などの血液検査で肝機能障害を指摘され、腹部超音波検査、腹部CT検査などの画像検査で肝臓がんと診断されることが少なくありません。肝炎ウィルスなどによる慢性肝炎や肝硬変を背景として肝臓にがんが出来やすいとされています。最近では肝炎ウィルスによる肝臓がんが減少傾向にあり、肝炎ウィルス以外にはアルコール性肝障害や脂肪肝が肝臓がんの原因として増加傾向にあります。肝臓がんの診断には造影エコー検査やCT・MRI検査を行い、外科治療やカテーテル治療(TACE:肝動脈塞栓化学療法、HAIC:肝動注化学療法)やラジオ波焼灼療法(RFA)を行っています。

■症状

自覚症状はほとんどなく、肝臓の腫瘍が大きくなった場合に、腹部膨満感などを認める程度です。

■診断

– 腹部超音波(エコー)検査

ベッドサイドにて施行可能で、X線被爆もないため患者さんの身体的負担が少ない検査です。ただし、腸管ガスや皮下脂肪、術者の技量により観察範囲が制限されることもあるのが欠点です。当院ではエコー用の造影剤を注射して行う造影超音波検査も行っています。

– 腹部CT・MRI検査

CT検査・MRI検査では、体を輪切りにする断層写真が撮影でき、任意の方向の断面画像が得られます。CT検査ではX線被爆を伴うため妊婦の方では撮影制限があります。MRI検査では、磁気を用いて撮影するため体内に金属機器が入っている方や入れ墨がある方は撮影制限があります。この2つの検査は、術者の影響を受けないため客観的な評価が可能であり、病変の大きさや広がり、リンパ節転移や周囲臓器への広がりを調べることができます。また治療前後での腫瘍の大きさなどが客観的に判断でき、治療効果の評価が可能です。

■治療

肝細胞がんの治療は肝機能と腫瘍の個数と大きさをもとにして治療方針を決定します。治療には外科的肝切除が中心ですが、切除後の残肝機能や肝腫瘍の個数・部位、患者背景により、局所治療や血管内治療および化学療法が選択されることもあります。消化器科では局所治療であるラジオ波焼灼療法、血管内治療、化学療法を行っています。

– ラジオ波焼灼療法(RFA)

腫瘍をエコー機器で見ながら体表より腫瘍を穿刺し、腫瘍内部に高熱を発生させがんを焼いて死滅させる方法です。治療の際には体表の穿刺部に局所麻酔を行います。また治療中は痛みや熱感を感じないように鎮静剤の点滴を行います。治療に要する時間は約10~20分程度です。その他にも穿刺針よりエタノール(アルコール)をがんに注入し死滅させる経皮的エタノール注入療法(PEIT)も行う場合があります。

症例

肝臓に類円形の腫瘤(右側:赤矢頭)を認めます。

  • 別角度からの造影エコーの動脈相では正常肝組織より高エコーを呈しています。
  • 造影エコーの平衡相では腫瘤は正常肝組織より低エコーを呈しています。

RFA:腫瘍(赤矢頭)にRFA針(黄色矢頭)を刺しこみ、腫瘍内部からラジオ波にて焼灼します。

エコーにて腫瘍を描出し、体表に局所麻酔を行ったうえで穿刺を行います。腫瘍内部に針が到達したことを確認しラジオ波焼灼を行います。

■肝動脈化学塞栓療法(TACE)・肝動注化学療法(HAIC)

カテーテルを動脈内に挿入し、肝動脈からがんを栄養する血管に抗がん剤と血管塞栓剤を注入することで、がんを壊死させる治療です。できるだけ腫瘍のみに流入する血管を選択し治療を行うため、正常肝組織への影響を少なく抑えることが出来るため、複数の病変に対して治療ができます。そのため肝臓内には多発する病変が良い適応となります。肝機能や病変の部位によっては抗がん剤や塞栓剤のみを使用する肝動脈塞栓療法(TAE)・肝動注化学療法(HAIC)を行うこともあります。

■分子標的薬

上記のいずれの治療も対象にならないような肝内の多発病変や、肝臓以外の臓器に転移がある場合は化学療法の適応となります。化学療法としては、肝がんに対しては分子標的薬を使用します。当院ではレンビマ®︎(レンバチニブ)、ネクサバール®︎(ソラフェニブ)を主に用いて治療を行っています。