診療内容
■ 逆流性食道炎(GERD)とは
逆流性食道炎は、胃の中の胃酸や食べたものが食道に逆流することで起こる病気です。正式には「胃食道逆流症(GERD:ガード)」と呼ばれています。
私たちの体には、食道と胃のつなぎ目(噴門:ふんもん)に「逆流を防ぐ機能」が備わっています。しかし、この働きが弱くなると、胃酸が食道へ上がってきてしまいます。食道の粘膜は胃の粘膜とは違い、胃酸に対する防御力が弱いため、繰り返し胃酸にさらされると炎症を起こし、胸やけや痛みなどのつらい症状が現れます。
日本では近年、逆流性食道炎の患者さまが増えています。食生活の変化や高齢化に加え、ピロリ菌の感染率が下がったことで胃酸の分泌が増えたことが背景にあると考えられており、一般の方の約10人に1人が、何らかの逆流症状を経験しているといわれています。
[参照: Iwakiri K, et al. J Gastroenterol. 2022;57(4):267-285]
「よくある病気だから」と軽く考えず、つらい症状があるときは早めにご相談ください。適切な診断と治療で、多くの方が楽になっています。
■ 原因とタイプ
逆流性食道炎の原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって起こることがほとんどです。
【逆流の原因】
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下部食道括約筋(LES)の機能低下
食道と胃のつなぎ目には、「下部食道括約筋」という筋肉があり、普段は胃の内容物が逆流しないよう「フタ」のような役割をしています。加齢やさまざまな原因でこの筋肉の力が弱くなると、逆流が起こりやすくなります。
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食道裂孔ヘルニア
胸とお腹の境目にある食道の穴(食道裂孔)は、筋肉ではさまれています(横隔膜脚)。生まれつきの体質や、加齢、肥満、おなかへの圧力などでこの筋肉が弱くなり、穴が広がってしまうことがあります。その穴から胃などが胸の方へせり上がった状態を「食道裂孔ヘルニア」と呼びます。食道裂孔ヘルニアがあると、逆流を防ぐしくみが弱まり、胃酸が食道に上がりやすくなります。ヘルニアが大きいほど、症状が強くなる傾向があります。
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生活習慣の影響
食べ過ぎ、早食い、食後すぐに横になる・前かがみなどの姿勢、脂っこい食事やアルコール、肥満、喫煙なども逆流を起こしやすくする要因となります。また、ストレスが胃酸の分泌を増やしたり、食道の感受性を高めたりすることも知られています。
【逆流のタイプ】
逆流性食道炎にはいくつかのタイプがあります。
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びらん性GERD(逆流性食道炎)
内視鏡で食道の粘膜に傷(びらん)が見えるタイプです。重症度はロサンゼルス分類(Grade A~D)で評価します。
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非びらん性GERD(NERD)
内視鏡では食道に明らかな傷が見えないものの、胸やけなどの症状がある状態です。逆流性食道炎の患者さまの半数以上がこのタイプに当てはまります。 [参照: Iwakiri K, et al. J Gastroenterol. 2022;57(4):267-285]
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食道外症状を伴うタイプ
逆流が原因で、のどの違和感・声がれ・慢性的な咳・喘息のような症状が出ることがあり、「咽喉頭逆流症(LPRD)」と呼ばれます。
■ 放置するとどうなる?
逆流性食道炎は命に関わる病気ではないことがほとんどですが、放置していると、以下のようなことが起こる可能性があります。
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生活の質の低下
胸やけ、のどの不快感などが続くことで食事や睡眠の質が低下したり、日常生活全体に影響が出ることがあります。
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食道の狭窄(きょうさく)、つかえ感
炎症が長く続くと、食道が狭くなって食べ物が飲み込みにくくなることがあります。
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バレット食道
食道の粘膜が胃の粘膜に置き換わる変化(バレット食道)が生じることがあります。まれに食道腺がんにつながる可能性が指摘されており、定期的な経過観察が必要とされています。
[参照: Zellenrath PA, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2024;23(2):225-235] -
精神的な負担
症状が長引くことで、不安や気分の落ち込み、睡眠障害をおこす方も少なくありません。
■「逆流かも」と思ったけれど、別の病気の可能性も?
胸やけや胸の痛み、のどの違和感といった症状は、逆流性食道炎に似ていても、実は別の病気が原因であることがあります。正確な診断のためには、専門的な器械を用いた精密な検査が必要となることがあります。
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機能性ディスペプシア(FD)
胃もたれや早期満腹感など、胃の不快な症状が続く病気です。内視鏡では異常が見つからないことが多く、逆流性食道炎と区別がつきにくい場合があります。
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好酸球性食道炎
アレルギーに関連して食道に炎症が起きる病気です。食べ物がつかえる感じが特徴的です。
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食道運動障害(アカラシアなど)
食道の動き(蠕動運動)がうまく働かなくなる病気です。飲み込みにくさや胸の痛みが出ます。
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機能性胸やけ
検査では逆流が認められないにもかかわらず、胸やけの症状がある状態です。食道の過敏性やストレスが関係していることがあります。
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心臓の病気
胸の痛みが食道ではなく、心臓に原因がある場合もあります。急な胸痛は、まず循環器内科の受診をお勧めします。
循環器内科
当センターでは、胃カメラだけでなく、 食道内圧検査や24時間pHインピーダンス検査など専門的な検査を行い、症状の本当の原因を突き止めます。「逆流かもしれない」と思ったら、自己判断せず、まずはご相談ください。
症状から探す
胸やけ/胃酸が上がってくる
みぞおちから胸のあたりが「ジリジリ」「チリチリ」と焼けるような感覚は、逆流性食道炎でもっとも多い症状です。食後や横になったときに強くなることが多く、就寝中に目が覚めてしまう方もおられます。
また、酸っぱいものや苦いものが口の中まで上がってくる感覚を「呑酸(どんさん)」といいます。これも逆流の代表的なサインです。
このような症状が週に2回以上ある方、市販の胃薬では治まらない方は、一度専門的な診察をお受けになることをお勧めします。
げっぷ・お腹の張り
げっぷが頻繁に出る、お腹が張って苦しい――こうした症状も逆流性食道炎と関係していることがあります。食道と胃のつなぎ目の筋肉が緩むと、胃にたまったガスが食道を逆流しやすくなります。
また、胃酸の逆流によって無意識に空気を飲み込む回数が増え、お腹の張りやげっぷにつながることもあります。これらの症状が続く場合は、逆流性食道炎でなく、機能性ディスペプシアなど他の病気の可能性もありますので、きちんと調べることが大切です。
胸痛
胸が締めつけられるような痛みや、キューッとする違和感がある場合、「心臓の病気では?」と心配になる方も多いと思います。実際、心臓に異常がなく、食道への逆流が原因だったというケースは珍しくありません。
逆流による胸痛は、食後に起きやすい、横になると悪化する、酸っぱいものが上がる感覚を伴う、といった特徴があります。ただし、まず心臓の病気を除外することが大切ですので、急な強い胸痛の場合は、すぐに循環器内科などの医療機関を受診してください。
循環器内科で「心臓に異常はない」と言われたのに胸痛が続く方は、逆流が原因かもしれません。当センターにご相談ください。
のどの違和感(口の中がにがい・すっぱい)/声がれ
「のどに何かがつかえている感じがする」「声がかすれる」「口の中が苦い・すっぱい」――このような症状は、逆流した胃酸がのどまで到達して炎症を起こしている可能性があります。これを「咽喉頭逆流症(LPRD)」と呼びます。
① [参照: Yadlapati R, et al. Am J Gastroenterol. 2025;121(2):322-336]
② [参照: Lechien JR, Hoppo T, et al. Laryngoscope. 2024;134(4):1614-1624]
③ [参照: Suzuki T, Hoppo T, et al. J Neurogastroenterol Motil. 2022;28(1):69-77]
逆流がのどに影響する場合、体を起こしているときや立っているときに症状が出やすいのが特徴です。また、胸やけを感じない方でも、のどの症状だけが出ることがあります。耳鼻咽喉科を受診しても原因がわからず、長い間お悩みの方もおられます。
のどの違和感や声がれ、鼻水などの症状が長引いている方は、逆流が原因ではないか、一度調べてみることをお勧めします。
咳・喘息
長引く咳や、喘息のような症状が実は胃食道逆流と関係していることがあります。逆流した胃酸が気管を刺激したり、食道から迷走神経を介して咳の反射を引き起こしたりするためです。
風邪でもないのに咳が2か月以上続いている、夜寝ているときや食後に咳がひどくなる、気管支の薬を使っても咳が止まらない――こうした場合は、逆流が原因かもしれません。
呼吸器内科で長期にわたり治療を受けても改善しない咳がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。
検査から探す
■ 検査でわかること・つらさへの配慮
「検査って痛くないかな」「つらくないかな」と不安に思う方は多いと思います。どうぞご安心ください。当センターでは、患者さまの負担をできるだけ軽くするよう配慮しながら検査を行っています。
逆流性食道炎は、症状だけでは正確な原因がわからないことがあります。検査によって「なぜ逆流が起こっているのか」「どのタイプの逆流なのか」を明らかにすることで、あなたに最も合った治療法を選ぶことができます。
検査の流れや所要時間は、事前にわかりやすくご説明いたしますので、わからないことがあれば何でもお聞きください。
■ 検査結果から治療選択への流れ
検査結果に基づいて、最適な治療法を一緒に考えます。
まず胃カメラで食道の状態を確認し、必要に応じ食道内圧検査や24時間pHインピーダンス検査を行います。これらの結果を総合的に判断して、生活指導、お薬の調整、内視鏡治療、外科治療など、最適な治療法をご提案します。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
口または鼻から細い管(内視鏡)を入れて、食道・胃・十二指腸の内部を直接観察する検査です。食道に炎症やびらん(粘膜の傷)がないか、食道裂孔ヘルニアがないかなどを確認します。
逆流性食道炎の重症度は「ロサンゼルス分類(Grade A~D)」で評価します。また、バレット食道や他の病気がないかもあわせてチェックします。
所要時間:10~15分程度
当センターでは、鎮静剤(眠くなるお薬)を使用した検査にも対応しており、楽に受けていただけるよう配慮しています。「以前胃カメラがつらかった」という方も、お気軽にご相談ください。
24時間pHインピーダンス検査
鼻から細いセンサー付きのチューブを入れ、24時間にわたり食道内の酸性度(pH)と逆流の動きを測定する検査です。
■ この検査でわかること
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胃酸がどれくらいの時間、食道に触れているか(酸暴露時間)
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酸性の逆流だけでなく、酸性ではない逆流(非酸逆流)も検出できます
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症状の出たタイミングと逆流のタイミングが一致しているかどうか
お薬を飲んでいるのに症状がよくならない方にとって、この検査は原因を突き止めるうえで非常に重要です。チューブは細いので、入れている間も食事や日常の動作はできます。医師がお声がけをしながら進めますので、ご安心ください。
食道内圧検査(HRM:高解像度マノメトリー)
鼻から細いセンサー付きのチューブを入れ、食道の筋肉の動き(蠕動運動)と、食道と胃のつなぎ目の筋力を測定する検査です。
■ この検査でわかること
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下部食道括約筋の締まり具合(逆流を防ぐ力がどれくらいあるか)
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食道全体の動き方(食べ物をきちんと胃へ送れているか)
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食道運動障害(アカラシアなど)の有無
この検査は、内視鏡治療や外科手術を検討する際に、治療方針を決めるうえで欠かせない検査です。所要時間は15分程度です。
食道透視(バリウム検査)
バリウム(造影剤)を飲んでいただき、X線で食道の形や動き、液体の逆流がないかをリアルタイムに観察する検査です。
食道裂孔ヘルニアの大きさや、食道の形態を詳しく評価するのに役立ちます。放射線技師がお声がけをしながら一緒に進めますので、難しい検査ではありません。どうぞご安心ください。
治療方法をさがす
逆流性食道炎の治療は、症状の程度や原因によって異なります。当センターでは、患者さまのお気持ちとライフスタイルを大切にしながら、最適な治療法を一緒に選んでいきます。
■生活指導
逆流性食道炎の治療で最初に大切なのは、毎日の生活習慣を見直すことです。お薬だけに頼るのではなく、日常のちょっとした工夫で症状がやわらぐことがあります。
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食事の工夫
食べ過ぎ・早食いを避け、腹八分目を心がけましょう。
脂っこいもの、辛いもの、酸味の強いもの、チョコレート、コーヒー、炭酸飲料、アルコールは、胃酸の逆流を起こしやすくします。できる範囲で控えましょう。
食後すぐに横にならず、食後2~3時間は体を起こしておくと効果的です。
よく噛んで、ゆっくり食べることも大切です。 -
体の姿勢と睡眠
前かがみの姿勢はお腹を圧迫するため、逆流しやすくなります。
夜間に症状がある方は、枕を少し高くしたり、上半身を軽く起こして寝ると楽になることがあります。
ベルトやコルセットでお腹を締めつけすぎないようにしましょう。 -
その他
適度な運動で体重を管理することも、症状改善に役立ちます。
ストレスも逆流に影響します。無理をしないことが大切です。
■ 内服治療(お薬による治療)
逆流性食道炎のお薬は、胃酸の分泌を抑えて、食道の炎症を治し、症状を改善するものが中心です。
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主なお薬
・PPI(プロトンポンプ阻害薬)
胃酸の分泌を強力に抑える薬です。逆流性食道炎治療の第一選択として広く使われています。
[参照: Iwakiri K, et al. J Gastroenterol. 2022;57(4):267-285]・P-CAB(ボノプラザンなど)
PPIよりさらに強く、速く胃酸を抑える新しいタイプのお薬です。PPIで効果が不十分な方にも有効なことがあります。
[参照: Koo TH, Fass R. Esophagus. 2026;23(2):275-291]・その他:胃の動きを改善する薬、食道の粘膜を保護する薬、漢方薬などを症状に合わせて組み合わせることがあります。
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お薬のやめどきと長期服用の考え方
「お薬はいつまで飲むの?」と不安に思う方もいらっしゃると思います。症状が落ち着いたら、お薬を減らしたり、頓服(症状があるときだけ飲む)に切り替えたりすることを検討します。ただし、お薬をやめると症状が再発する方も少なくありません。
長期間の服用が必要な場合でも、定期的に状態を確認しながら、できるだけ少ないお薬で症状をコントロールすることを目指します。お薬だけでは不十分な方には、内視鏡治療や手術という選択肢もありますので、遠慮なくご相談ください。
■ 内視鏡治療(ARMS/ARMP)
お薬を飲んでも症状がよくならない方、できればお薬をやめたい方に向けた新しい治療法です。全身麻酔を必要とせず、内視鏡(胃カメラ)を使って行うため、おなかに傷がつかず、体への負担が少ない治療です。
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ARMS(Anti-reflux Mucosectomy)とは
ARMS(アームズ)は、食道と胃のつなぎ目の粘膜を内視鏡で切除する治療法です。切除した部分が治る過程で、つなぎ目がキュッと締まり、逆流を防ぐ力が回復します。2022年4月より保険適用となりました。
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ARMP(Anti-reflux Mucoplasty)とは
ARMP(アームピー)は、粘膜を切除し、切除した粘膜をクリップなどで閉じることでつなぎ目を締める治療法です。出血や穿孔のリスクがさらに低く、より安全性に配慮した手法です。
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治療の適応(この治療を受けられる方)
・胃酸を抑えるお薬(PPI・P-CAB)を十分に使っても症状が改善しない方
・24時間pHインピーダンス検査で異常な逆流が確認された方
・食道裂孔ヘルニアが3cm未満の方
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治療を受けられない場合
・大きな食道裂孔ヘルニア(3cm以上)がある方は、外科手術の方が適しています。
食道の運動機能に問題がある方 -
手術との比較
外科手術(腹腔鏡下噴門形成術)と比べると、ARMS/ARMPはおなかに傷がつかず、回復も早い傾向があります。ただし、逆流を防ぐ効果は外科手術の方が強いとされているため、ヘルニアが大きい方や重度の逆流がある方には手術が適していることがあります。患者さまの状態に合わせて、最適な治療法をご提案します。
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治療の効果
研究データによると、治療を受けた方の約70~80%で症状が改善し、約40~50%の方がお薬をやめることができています。効果が不十分な場合は、再度治療を行うことも可能です。また、将来的に外科手術が必要になった場合でも、ARMS/ARMPを受けていることは噴門形成手術の妨げにはなりません。
[参照: Xu T, et al. Dig Dis. 2025;43(6):601-618] -
治療の流れ
①検査入院(1泊2日)
まず、胃カメラ・食道内圧検査・24時間pH検査を行い、ARMS/ARMPの適応があるかどうかを診断します。②治療入院(2泊3日~)
治療当日は静脈麻酔で眠った状態で行いますので、痛みはほとんどありません。治療時間は30~60分程度です。翌日から食事を段階的に再開します。③術後の経過
術後2か月間は胃酸を抑えるお薬を飲んでいただきます。2か月後に再度検査入院(1泊2日)を行い、治療効果を確認します。
[参照:Sumi, K, et al. Endoscopic treatment of proton pump inhibitor-refractory gastroesophageal reflux disease with anti-reflux mucosectomy: Experience of 109 cases. Digestive Endoscopy. 2021]
■ 外科治療(噴門形成術)
逆流の重症度が高い場合や、中等度から大きな食道裂孔ヘルニアがある場合には、積極的に外科治療を検討します。
※ 手術適応は、内視鏡検査や食道機能検査(内圧検査・pHモニタリングなど)を含めて総合的に判断します。
逆流の重症度が高い場合や、中等度から大きな食道裂孔ヘルニアがある場合には、積極的に外科治療を検討します。
※ 手術適応は、内視鏡検査や食道機能検査(内圧検査・pHモニタリングなど)を含めて総合的に判断します。
■ 術式
腹腔鏡下噴門形成術(主にToupet法:トゥーペと読みます)を行います。おなかに5㎜から1㎝の小さな穴をあけ、高精細な腹腔鏡を用いて行います。手術支援ロボットDavinciを用いた手術にも対応します(自費診療)。大きくずれてしまった胃と食道の位置関係を正常に戻した上、緩んだ横隔膜の穴を縫い縮めます。そして胃の上部(胃底部)を食道の周囲に巻きつけ、逆流を防ぐ弁(逆流防止機構)を作り直します。
患者さまの食道運動機能を詳しく調べたうえで、主にToupet法(トゥーペ法:270度巻きつけ)で行っています。
[参照: Delcarro A, et al. J Laparoendosc Adv Surg Tech A. 2026;36(4):281-285]
■ 入院・回復の目安
入院期間は一般に3-5日間程度です。術後当日から流動食を再開し、食事を段階的に上げていきます。また、術後当日からトイレ歩行が可能です。
術後早期には、飲み込みにくさ(軽いつかえ感)や食事量の一時的な低下がみられることがありますが、多くは時間とともに改善します。退院後は、少量ずつゆっくり食べること、よく噛んで食べることが大切です。
多くの患者さまで、胸やけや逆流症状の改善とともに、薬の減量・中止が可能となります。日常生活や仕事への復帰は、通常1~2週間程度が目安です。
■ 心理カウンセリング
逆流性食道炎は、長引く症状によって気持ちが沈んだり、不安を感じたり、眠りが浅くなったりすることがあります。研究でも、逆流症状のある患者さまは不安やストレスを強く感じやすいことがわかっています。
また、ストレスや不安が逆流の症状を悪化させることもあり、心と体は密接につながっています。当センターでは、公認心理師がご相談に対応し、気持ちの面からも治療をサポートいたします。
「体の症状なのに心理カウンセリング?」と思われるかもしれませんが、心身の両面からアプローチすることで、より良い治療効果が期待できます。お気軽にスタッフにお声がけください。
■ 栄養指導
管理栄養士が、あなたの生活習慣や食事内容を一緒に振り返り、無理なく続けられる食事のとり方をサポートします。
症状を悪化させにくい食品の選び方や調理の工夫、食事の量やタイミング、食べ方のポイントについて、わかりやすくお伝えします。「何を食べたらいいかわからない」「好きなものが食べられなくてつらい」というお気持ちにも寄り添いながら、一緒にできることから始めていきましょう。
多職種で診療をサポート
■ チーム医療のコンセプト
千船病院における逆流性食道炎の診療では、消化器内科医と外科医が中心となり、多職種からなるチームが密に連携し、一人ひとりの患者さまに最適な治療を提供しています。内科の専門的な診断力と、外科の手術技術を組み合わせることで、薬物治療から内視鏡治療、外科治療まで、幅広い選択肢をシームレスにご提案できます。
看護師・管理栄養士・臨床心理士・放射線技師・検査技師・臨床工学技士・医事スタッフがそれぞれの専門性を生かし、検査から治療、退院後の生活まで、チーム全体であなたをサポートします。
消化器内科医より
胸やけや呑酸、のどの違和感、慢性的な咳などでお困りではありませんか。逆流性食道炎は身近な病気ですが、症状や原因は患者さまによってさまざまです。当センターの消化器内科では「胸やけ外来」として、皆さまのご相談をお受けしています。専門的な検査と経験豊富な医師による診断で、症状の原因を丁寧に評価し、お一人おひとりに合った治療をご提案します。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
外科医より
重症の逆流性食道炎や大きめの食道裂孔ヘルニアがある場合には、外科手術が有効な選択肢となります。当院では腹腔鏡を用いた体に優しい手術を行っており、創が小さく、体への負担に配慮した治療が可能です。徹底した問診を行い、患者さま一人ひとりの状態を丁寧に評価し、安心して治療を受けていただけるようサポートいたします。
放射線科より
放射線科では、主に「食道透視」検査を担当しています。造影剤を飲んでいただき、食道の形や動き、胃液の逆流がないかなどをリアルタイムにX線画像で詳しく調べます。技師がお声がけをしながら進めますので、どうぞご安心ください。
検査科より
臨床検査技師は、食道内圧検査やインピーダンス検査など、逆流性食道炎の診断に必要な専門的な検査を担当しています。専門的な検査で不安に感じる方も多いため、患者さまに寄り添い、安心して検査を受けていただけるよう心がけています。
臨床工学科より
臨床工学科では、検査に使用する機器のセッティングや修理・メンテナンスを担当しています。高い精度が求められる検査機器の精度を保ち、患者さまが安全で正確な検査を受けられるよう努めています。
栄養管理科より
管理栄養士が、生活習慣や食事内容を一緒に振り返り、無理なく続けられる食事をサポートします。症状を悪化させにくい食品の選び方や調理の工夫、食事量や食べ方のポイントについてお伝えします。一緒にできることから始めていきましょう。
看護部より
看護師は、検査前後の説明や検査介助、症状の観察、生活指導を通して、患者さまの安全と安心を第一に考えた看護を提供しています。不安や疑問に丁寧に寄り添いながら、お一人おひとりの状態やお気持ちに合わせた看護を心がけ、安心して治療に臨んでいただけるよう支援しています。
医事科より
医事科は、患者さまと医療スタッフをつなぐ架け橋として業務にあたっています。外来受付、診察のご案内、診療報酬の算定、各種証明書の発行などを担当しています。ご不明な点がございましたら、内科受付カウンターの医事科スタッフまでお気軽にお尋ねください。
受診案内
■ 初診の流れ
① ご予約:紹介元の医療機関を通じてご予約いただくか、予約センターに直接お電話ください。ご予約なしでも受付時間内であれば診察を受けられますが、お待たせする場合がございますので、事前のご予約をお勧めします。紹介状なしでのご受診については③をご確認ください。
② 当日の持ち物:マイナンバーカード(マイナ保険証)+医療証(お持ちの方のみ)、お薬手帳、紹介状(お持ちの方)をご持参ください。他の医療機関での検査結果(胃カメラの画像データ、血液検査の結果、CTのCD-ROMなど)があれば、あわせてお持ちいただくと診療の参考になります。
③ 紹介状について:紹介状がなくても診察は可能です。ただし、紹介状をお持ちいただくと選定療養費(7,700円)がかからなくなりますので、できればご持参をお勧めいたします。
④ 初診での診察:問診で症状やこれまでの治療経過を丁寧にお聞きし、必要な検査の計画を立てます。初診前に特別な検査を受けていただく必要はありません。
遠方からお越しの方へ
遠方から通院される方のご負担をできるだけ少なくするため、検査や治療のスケジュールを効率的に調整いたします。通院回数を最小限にできるよう配慮しますので、お気軽にご相談ください。
■ 受診回数の目安
初診から治療までの一般的な流れです(個人差があります)。
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初診(1回目)
問診・診察・治療方針の相談
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2回目以降
胃カメラ・食道内圧検査・24時間pH検査など必要検査で1~2回受診
※遠方等でご希望の方は入院(1泊2日)での検査も可能です。医師にご相談下さい。
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検査後の受診
検査結果説明および治療方針の決定
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治療入院(内視鏡治療の場合は2泊3日~、手術の場合は3~5日)
よくある質問 Q&A
Q. 診察を受けるには予約や紹介状が必要ですか?
ご予約されていなくても、受付時間内であれば診察を受けられます。ただし、お待たせすることがありますので、事前のご予約をお勧めいたします。紹介元の医療機関からご予約いただくか、予約センターに直接お電話ください。 紹介状がなくても診察は可能ですが、ご持参いただくと選定療養費(7,700円)が不要となります。
Q. 初診前に他の病院で検査を受けておく必要がありますか?
初診前に特別な検査を受けていただく必要はありません。ARMS/ARMPを見据えた専門的な評価を行います。もし他の医療機関で受けた検査結果(胃カメラ画像、血液検査、CTのデータなど)がございましたら、お持ちいただくと参考になります。
Q. 遠方に住んでいるのですが、通院回数は多いですか?
遠方からお越しの方のご負担を減らすため、検査・治療のスケジュールを効率的に調整しています。お気軽にご相談ください。
Q. 検査入院は必ず必要ですか?
通常は外来で検査をしています。遠方の方などの場合は必要に応じて入院での対応も可能となっております。
Q. 検査はつらくないですか?
当センターでは、患者さまの負担を最小限にするよう配慮しています。チューブはとても細いため、多少の違和感はありますが、強い痛みはありません。
Q. お薬をずっと飲み続けないといけませんか?
症状が安定したら、お薬を減らしたり、症状があるときだけ飲む方法に切り替えることを検討します。ただし、お薬をやめると再発する方もいらっしゃいます。お薬を長く飲むことに不安がある場合は、内視鏡治療(ARMS/ARMP)や外科手術という選択肢もありますので、一緒に相談しましょう。
Q. ARMS/ARMP治療の入院期間はどれくらいですか?
最短で1泊2日ですが、もっとも多いのは2泊3日です。経過を慎重に観察するために、4泊5日をご希望される方もいらっしゃいます。
Q. ARMS治療を受けた後、お薬をやめられますか?
研究データでは、治療を受けた方の約40~50%がお薬をやめることができています。残りの方もお薬の量が減ったり、症状が軽くなったりするなどの改善がみられています。
Q. 治療後、すぐに普通の食事ができますか?
術後早期は、飲み込みにくさや食事量の低下が一時的にみられることがありますが、多くは時間とともに改善します。退院後は、少量ずつゆっくり食べること、よく噛むことが大切です。日常生活や仕事への復帰は、通常1~2週間程度が目安です。
Q. 逆流性食道炎と診断されました。食事で気をつけることはありますか?
脂っこいもの、辛いもの、酸味の強いもの、チョコレート、コーヒー、炭酸飲料、アルコールは逆流を起こしやすくします。できる範囲で控えましょう。 食べ過ぎ・早食いを避け、腹八分目を心がけ、食後2~3時間は横にならないようにすると効果的です。管理栄養士による個別の栄養指導も行っていますので、お気軽にご相談ください。
Q. 逆流がつらくて眠れません。何か工夫はありますか?
夜間に症状が出る方は、枕を少し高くしたり、上半身を軽く起こした姿勢で寝ると楽になることがあります。夕食は就寝の2~3時間前までに済ませるようにしましょう。それでも改善しない場合は、お薬の調整で楽になることもありますのでご相談ください。
Q. 外科治療はつらくないですか?
この手術では、通常5mm~1cmの傷が数箇所しかつきません。手術中から痛み止めを使用し痛みのない手術を目指しています。そのため、早期の退院や社会復帰が可能となります。
Q. ARMS治療入院の費用はどれくらいかかりますか?
患者さまの所得により個人差がありますが、保険適応・高額療養費制度が適用となります。






