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診療部 ― 消化器内科

胆道・膵臓疾患

胆道・膵臓疾患

Lower digestive tract desease

胆道疾患には胆嚢結石や胆管結石による胆嚢炎・胆管炎や、胆嚢がん・胆管がんなどの悪性疾患、Ig-G4関連胆管炎や原発性硬化性胆管炎・胆汁うっ滞性胆管炎などがあります。膵臓疾患としては、緊急入院・重症管理を要する急性膵炎や、慢性膵炎および膵石、膵がんや膵管内乳頭状粘液産生性腫瘍(IPMN)などの診断・治療を行っています。これら胆道・膵臓疾患の診断や治療には、内視鏡的ドレナージなど専門性の高い胆膵内視鏡技術が必要で、緊急処置・緊急入院を必要とする病態も多いため、胆膵内視鏡専門医が365日24時間体制で対応しています。

総胆管結石性胆管炎

肝臓で生成された胆汁を十二指腸に排出する管を総胆管といい、その総胆管内にある結石を総胆管結石といいます。多くは胆嚢から総胆管に排出された結石ですが、胆嚢摘出後にも総胆管内でできる場合もあります。結石が総胆管と十二指腸の合流部である十二指腸乳頭部付近で詰まると胆管炎や膵炎を生じ重篤化することがあります。

■症状

食後30分くらいに突然の腹痛を来たし、発熱・悪寒・黄疸を伴います。

■診断

血液検査で肝胆道系障害・黄疸、炎症の程度をチェックし、腹部超音波検査(エコー)やCT・MRCP検査にて総胆管結石や胆管の拡張の有無を診断します。

治療法

できるだけ速やかに内視鏡的胆管結石採石術(ERCP+採石術)を行います。十二指腸用内視鏡を経口的に挿入し十二指腸乳頭部から胆管造影を行います。総胆管内に結石を認めた場合は、十二指腸乳頭括約筋切開術(EST)や十二指腸乳頭括約筋バルーン拡張術(EPBD)を行い結石を除去します。内視鏡処置が困難な場合には、体表から胆管の処置を行う経皮経肝的胆管ドレナージ術(PTBD)を行うこともあります。

総胆管結石に対する内視鏡的結石除去

  1. 胆管の十二指腸の開口部である
    十二指腸乳頭です。

  2. 胆管への処置を行うため十二指腸乳頭を
    切開します。

  3. 切開後の乳頭は胆管開口部が
    広くなっています。

  4. 胆管内にバスケットカテーテルを挿入し、
    胆管結石をとらえます

  5. バスケット内にとらえた結石を胆管から
    十二指腸に引っ張り出します。

  6. バスケット内の結石は腸管内に放出し、
    便とともに体外に排出されます。

急性胆嚢炎

胆嚢頸部に結石が嵌頓することで胆管と胆嚢内の交通が遮断され、胆嚢の炎症が生じます。結石だけでなく、胆管や胆嚢管の腫瘍や閉塞の原因となったり、胆嚢の血行障害や胆石以外の原因で生じたりすることもあります。胆嚢内に細菌感染を伴うと重症化することもおおく、炎症の増悪により胆嚢周囲膿瘍や胆嚢穿孔を来す恐れもあり、特に高齢者では播種性血管内凝固症候群(DIC)を生じることもあるため早急な治療が必要です。

■症状

右季肋部痛、発熱、悪心・嘔吐を認めます。

■診断

最も簡便で有効な検査は腹部超音波検査(エコー)です。
他にはCT検査やMRI検査を行います。

治療法

ガイドラインに準じて、外科手術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)や抗生剤治療を行いますが、全身状態が不良な場合やドレナージが必要な場合は、経皮経肝胆嚢穿刺(PTGBA)や経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を行います。

  • 胆嚢頸部に巨大な結石を認め、胆嚢内腔は虚脱し壁内および壁外膿瘍を認めます。

  • 心肺機能が悪い高齢患者さんであったため、PTGBDを施行し胆嚢炎は改善しました。

急性膵炎・慢性膵炎

総胆管結石やアルコール多飲が原因となって膵臓に炎症を生じるのが急性膵炎および慢性膵炎です。血液検査に加えてCT検査・MRI検査・内視鏡検査などの各種画像検査により原因と病態を把握し、膵臓の炎症を抑え、また膵炎の原因に対する治療を合わせて行っていきます。重症膵炎の治療経過中に膵仮性嚢胞や被包化膵壊死を来すこともあり、感染を伴う場合や増大傾向にある場合は経乳頭的膵管ドレナージ(EPS)、超音波内視鏡下膵嚢胞ドレナージ(EUS-CD)、内視鏡的壊死組織除去術(ネクロセクトミー)を行います。

■症状

上腹部痛・背部痛が持続し徐々に増強していきます。前屈姿勢で痛みが軽減することが多いとされています。腹痛の他には、悪心・嘔吐や腹部膨満感を認めることがあります。

■診断

血液検査で膵酵素であるアミラーゼ(AMY)の上昇や炎症の程度をチェックします。CT検査で膵腫大や膵壊死の有無、膵周囲の炎症の広がりを評価します。

治療法

軽症例では絶食・点滴治療を行いますが、重症例ではICU管理のものカテーテル治療(動注療法)や持続的血液濾過透析(CHDF)などを病態に応じて行います。胆石性膵炎の場合は、内視鏡的胆管結石除去や胆道ドレナージを行い、膵石や主膵管拡張を伴う慢性膵炎の急性増悪例では内視鏡的膵管ステント留置術などを行います。

■膵炎症例

  • 腹痛にて受診され、腹部CTで膵臓の腫大(赤矢印)と膵尾部周囲の炎症(黄矢印)を認めます。

  • 治療後、膵周囲に被包化壊死を認めたため(赤エリア)、胃から膿瘍腔内に壊死物質除去術(ネクロセクトミー)を検討しました。

  • 超音波内視鏡を用いて膿瘍腔を穿刺し、胃壁と膿瘍の癒着部のバルーン拡張を行います。

  • 胃壁・膿瘍癒着部が拡張されれば、内視鏡を膿瘍腔内に挿入し壊死組織の除去を行います。

  • 瘍腔内には壊死組織が充満しており、把持鉗子などで除去していきます。

■慢性膵炎症例

  • 膵頭部に膵石を多数認めます。

  • 膵体部および尾部にも膵石を認めます。

  • 内視鏡的膵管造影で主膵管の狭窄と膵石および膵嚢胞を認めます。

  • 膵液の流出障害を改善すべく膵管ステントを留置します。

  • 複数回の内視鏡的膵石除去、体外衝撃破砕術を繰り返します。

  • 膵実質内には膵石が残存することもあり、膵炎再発予防には禁酒などの生活改善が必要です。

胆道がん・膵臓がん

胆道がんおよび膵臓がんは、日本におけるがんによる死因のなかでも増えてきている悪性疾患です。症状に乏しいため診断時にはかなり進行した状態で見つかることも多いのが現状です。当院では胆道がん・膵臓がんの発生のリスクが高いとされている患者さんに対して、超音波内視鏡検査(EUS)やMRCPなどの画像診断を用いて積極的なスクリーニング検査を行い、早期発見に努めています。また膵臓がんのリスク因子とされる膵管内乳頭状粘液産生性腫瘍(IPMN)に対しても、ガイドラインに沿った適切な診断および経過観察を行っています。

胆道がん(胆嚢がん・胆管がん)

■症状

腹痛や吐き気、体重減少、黄疸(体が黄色くなる、白っぽい便が出る、尿の色が濃くなる、体にかゆみがでる)などがあります。

■診断

診断には血液検査による腫瘍マーカーの測定や腹部超音波検査、腹部CT検査、MRI検査など体に負担の少ない検査からおこないます。そのうえで胆嚢がんや胆管がんが疑われた場合には、超音波内視鏡検査(EUS)やERCP検査といった内視鏡検査を実施し、細胞診・組織診を行って診断を確定し進行度(ステージ)を決定していきます。

治療法

胆嚢がん・胆管がんと診断がついた場合には、進行度(ステージ)に応じて治療方針を決定します。治療には手術・化学療法・放射線治療がありますが、手術が根治を期待できる唯一の治療法であるため、まずは手術が可能かどうか検討します。転移や腫瘍の拡がりにより、手術での治療が困難と判断さえた場合には化学療法や放射線治療を行っていきます。また、黄疸や肝機能障害がある場合には、手術や化学療法ができないこともあるため、治療開始前に黄疸を改善させる減黄処置をおこないます。

■減黄処置(内視鏡的胆管ステント留置術)
  • 左右の胆管合流部に腫瘍を認めます。

  • MRCPでは非侵襲的に胆管像のイメージが可能です。

  • 内視鏡的胆管造影では肝門部胆管に狭窄を認めます。

  • 高齢で外科的治療を希望されなかったため、胆管の狭窄を改善させるため左右の胆管に金属ステントを留置しています。

手術

病変の伸展範囲や患者様の術前状態を考慮して術式(切除範囲など)を選択します。術式を決めるためにも、CTやMRIといった画像検査、EUSやERCPといった内視鏡検査による診断が非常に重要になります。

化学療法

手術困難例については、ゲムシタビンやシスプラチン、TS-1といった抗がん剤を適宜組み合わせて化学療法を実施します。腫瘍の拡がりや場所によって放射線治療の適応と診断した場合は神戸大学医学部附属病院や近隣の高次機能センターへの紹介を行っています。

膵臓がん

■症状

膵がんの症状は腹痛や背部痛、吐き気、体重減少、黄疸(体が黄色くなる、白っぽい便が出る、尿の色が濃くなる、体にかゆみがでる)などがあります。

■診断

診断には腫瘍マーカーや腹部超音波検査、腹部CT検査、MRI検査など体に負担の少ない検査からおこないます。そのうえで膵がんが疑われた場合には、必要に応じて超音波内視鏡検査(EUS)やERCP検査といった内視鏡検査を実施し、細胞診・組織診を加えて診断を確定し、進行度(ステージ)を決定していきます。膵がんは無症状であることが少なくなく、症状がでた時には進行がんが多いことから、慢性膵炎、糖尿病、膵嚢胞性腫瘍がある方や家族歴がある方は膵がんの高リスク群であるため、無症状であっても定期的な検査を実施することが重要とされています。

治療法

膵がんと診断がついた場合には、進行度(ステージ)に応じて治療方針を決定します。治療には手術・化学療法・放射線治療がありますが、手術が根治を期待できる唯一の治療法であるため、まずは手術が可能かどうか検討します。転移や腫瘍の拡がりで手術での治療が困難な場合には化学療法や放射線治療を検討していきます。

また、黄疸や肝機能障害がある場合には、手術や抗がん剤といった治療の妨げになるため、治療開始前に減黄(黄疸を改善させる)処置をおこないます。

手術は、病変の部位や伸展範囲、患者様の術前状態を考慮して術式を選択します。術式を決めるためにも、CTやMRIといった画像検査、EUSやERCPといった内視鏡検査による評価が非常に重要になります。手術困難例については、化学療法や放射線治療をおこないます。化学療法についてはいくつか種類があり、年齢や体力などを考慮してその都度投与する抗がん剤を調整していきます。

■症例
  • 膵尾部に周囲に浸潤を伴う腫瘍を認めます。

  • 肝臓内に転移病巣を認めます。

  • 超音波内視鏡では膵尾部に低エコー腫瘤を認めます。

  • 超音波内視鏡下に腫瘍を穿刺し細胞診で膵がんの確定診断となりました。

  • 抗がん剤治療を行い膵尾部の腫瘍は縮小傾向にあります。

  • 転移巣も縮小し、CT画像などによる治療効果を確認しながら、抗がん剤治療を継続していきます。